またエンジンのかかりが悪い。しかも燃費が悪くなってきた。

これまでは「キュカカ!」でかかっていたが、今では「キュカ!ボッ!キュカカ!」でかかるように。症状の出始めが12月なんで寒すぎ!なんてことも考えられるが、とりあえずエンジンの3大要素「良い圧縮・良い点火・良い混合気」の中、良い圧縮を見てみようと思う。

圧縮測定

まずはコンプレッションゲージで圧縮測定。測定方法は暖気後、普通にキーONからスロットル全開でセル回すだけ。ここら辺はキャブ車と変わりませんね
自分はアストロのコンプレッションゲージにM10ナローアダプタを噛ませて使ってますが、ストレート製のゲージが使いやすそうです。アダプタがロックできるので、アダプタがプラグホールに残った!なんてことがなくなるかと。特に水冷DOHCは構造的にプラグホールが深くなる傾向があるので、外れたり残ったりするとエンジンを降ろして取るまたはピックアップツールでつかむの2択です。

話は戻って、実際の測定値には誤差があるので3回くらい測定して平均したのが、気筒の圧縮圧力になります。結果は810kpa。あれ?なんか低くない?暖気足らんかった?

面倒ですが戻して20kmくらい近所をぐるぐると走行。結果は830kpa。これおかしいなあ。

※GSX-R125の標準値は900-1300Kpa(サービスマニュアル記載値)
なんで、どっかから圧縮が漏れているのは確定。ここから原因を探っていく
まず点検するのはバルブクリアランス。ここを確認して規定値内なら別の要因(ピストンリングやバルブ本体・ヘッド面またはバルブシートなどに何か問題がある)ことがわかる。

新車購入でオイルを頻繁に交換してたんで、十中八九ここがずれてるんでしょう。オイル管理が悪いと

なおサービスマニュアル上の規定値は
In 0.1-0.2mm(吸気) Ex 0.2-0.3mm(排気)です。
エンジンをいじるのに自信がない人は素直にお店に任しましょう。自分で整備するのは自己責任です。こんなとこ見に来る人にはわかっとるわ!って言われてそうですが。

※ガソリン専用 アダプタ:M10×1.0 M12×1.25 M14×1.25

バルブクリアランスの確認

前提 カウル左右共に取り外し済みであること。プラグを抜いてあること

ヘッドカバーを外す前にブローバイ用の空気吸入口カバーを外します。画像ではすでに外していますがヘッドの上にあるコントロールバルブ(円筒状の装置)に繋がっている青いコネクタを外してからカバーを取りましょう。カバーを外したら車体左側に回ってコントロールバルブにつながっている車体後方へのびるホースを外してから、コントロールバルブのステーを外します。

コントロールバルブと吸入口カバーについているホースはこのようについているため外す必要はありません。写真撮ってないんですがカバー裏面がブローバイで結構汚れていました。
次はヘッドカバーを外しますが、とてつもなく面倒でした。写真撮ってる余裕なんてありませんでしたよ
とりあえずラジエータの固定ボルトとブラケットを外してラジエータ本体を限界まで前に出します。画像ではそんなに前に出ていませんが、ラジエータ下についてるブラケットを外すともっと前に出せます

次はクラッチケーブルをフレームについてるホルダーから外してフリーに。あとは知恵の輪的にヘッドカバーを外していきます。エンジン後ろからタンク下を通るラジエータホースが干渉するのでフレームの間によけながら車体右側に出すと比較的楽
外したヘッドカバーにゴム製のワッシャがついてるのではがしておく。
自分のはカチコチに固まっていて再利用できるような状態じゃなかった。かなり熱が入る部分のゴム部品なのでケチらず新品に変えるのがオススメ。こういったところをケチるとオイルがにじんで余計な出費が増える。
次はバルブタイミングを圧縮上死点にしてバルブクリアランスを確認できるようにします
車体左側のバルブタイミングホール・クランクシャフトホールの蓋を外します。タイミングホールはコインドライバーがあると傷を入れずに回せます。自分は手元にあったタガネドライバーがちょうどいいサイズだったのでそれで回しました。樹脂部品なので無理にこじると割れると思います


蓋を外したらクランクシャフトホールにナットが見えると思います。そいつにソケットを差し込み今度はタイミングホールを覗きます
覗きながらクランクシャフトを左周りに回していると、1か所だけ縦に線が入っている場所があります。見つけたらタイミングホール上側にある切り欠きと線の位置を合わせます。合わせたらカムシャフトを組付け終わるまで触らないこと
今度はカム先端が斜め上を向いていること(逆ハの字)、カムスプロケットがこのような位置にあることを確認。
無ければ位置があっていません。
規定値は上にも示したようにIn 0.1-0.2mm(吸気) Ex 0.2-0.3mm(排気)です
測定にはシックネスゲージ(シクネスゲージ)を使います
自分はシックネスゲージを使うのが初めてだったので0.01刻みである新潟精機の品番65Mを使用しました。

新潟精機 SK 日本製 シクネスゲージ(すきまゲージ) カラースリーブタイプ 黒 25枚組 75mm CS-65M 0.03-1.00mm
新潟精機 SK シクネスゲージ(すきまゲージ) 25枚組 75mm 65M 0.03-1.00mm
サイズ:全長78×全幅13×厚さ17mm
ゲージサイズ:0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、0.10(mm) カラーバリエーションあり。
 
測定方法ですが、自分は感覚がわからないので0.01刻みで入らない=その厚みよりクリアランスが狭いという感覚で測っていきました。測定結果は以下の通り
こりゃ全体的にずれてますね。1番だけ規定値内ですが、今後バルブシートが削れてくることを考えると規定値下限ギリギリなここも要調整
測定が終わってクリアランスをメモしたら、ホルダーを外す前にカムチェーンテンショナーを外していきます。テンショナー先端にメガネレンチをかけて緩めます。固いので注意。
外すとバネが出てくるので無くさないように。無いとカムチェーンにテンションがかかりません。先端が外れたらシリンダー側の2本あるボルトを外してテンショナー本体を外しましょう。これでカムホルダーを外すことができます
ここは9.5sqの通常ソケットだと接続部とテンショナーが干渉します。9.5sqセミディープまたは6.3sqソケットを使いましょう。外すだけならスパナ・レンチでもOK
SK11 ソケットセット 6角 SHS209M クリップ色:黄 差込角:6.35mm 9点 1セット
6.3sqのスプラインソケット。六角ミリ/インチ・トルクス・スプライン兼用。サイズ5.5・6・7・8・10・11・12・13・14mm
高トルク(100N以上)をかけるには向かないが、持ってるとなにげに便利なやつ
SK11 セミディープソケットセット 差込角 9.5mm (3/8インチ) 8・10・12・13・14・15・17・19mm SHS308SD
サイズ8・10・12・13・14・15・17・19mm
セミディープで通常ソケットが干渉する場所用に。六角ミリ専用

※初めてエンジンに触るって人は、ここら辺からYoutubeに上がっているエンジンをバラしていく/組む動画を参考に作業しましょう。

まずカムホルダーを外すのですが、自分はカムホルダーを留めるボルトを緩めるときは数字の大きい8→7→6→5→4→3→2→1と緩めていきます。ここは人によって流儀があると思います。なので他人に聞く時「間違いだ!」とか言わないように。
ボルト外すのはすべてのボルトを緩めてからです。また入っていたボルトは位置が決まっています。元の位置に戻せるように数字を振って管理してください

ホルダーを外したらカムシャフトを外すのですが、そのまま外すとカムチェーンが中に落ちます。落とすとエンジンを全部バラす羽目になるので針金なんかでつるしておきましょう
 
つるしたらカムを取ります。カム面に傷つけると色々面倒なのでウエスでくるむかウエスを引いたトレーの中に。
カムシャフトを取った後です。シムは銀色のタペットの下にいます。
アストロのマグネットピックアップバーがとるのによさげ。手で取れないこともないですが、小さいので指が太い人は正直にツールに頼りましょう(一敗)

シムの厚さを選ぶ

シムの厚さは各バルブ違う場合があるので各バルブ1つずつシムの厚みをチェック、クリアランスと共に書いておきましょう。自分のは全部印字が消えてたんで手持ちのマイクロメータで測定。自分の場合①1.60 ②~④1.65が入ってました
シムの選び方ですが、GSX-R125の場合シムは0.05mm刻みで調整できますんでお好みで。
品番:12892-05C00-XXX
XXXにはシムのサイズ(例:1.65mm厚のシムが欲しい場合は12892-05C00-165が品番)
クリアランスが狭ければシムは薄く。広ければシムを厚くします。また規定値には幅がありますが、ここでどの程度クリアランスを取るかは各個人の考え方で違います。自分は規定値の真ん中を狙うように調整するので入れるシムは ①1.55 ②~④ 1.60です
こうすると計算上クリアランスは ①0.15 ②0.13 ③0.2-0.23 ④0.2-0.23 となります。どれも規定値内ですね。
シムの取り付けはエンジンオイルを塗ってサイズ印字のある方を上にして取り付けろと指定されています。シムを入れ替えタペットを付けたらあとは元に組みなおすだけです。

組み立て

タイミングホールを見て切り欠きと線の位置を合っているか確認。未確認で組んでバルブをピストンに当てると大惨事。修理にいくらかかることやら...
カムシャフトはシャフト部分にIn Exの刻印があるので要チェック。カムシャフトは画像のようにセットします(画像は使いまわし)

画像右がIn刻印のカムシャフト・左がEx刻印のカムシャフトです
スプロケットにもIn Ex書いてありますが、これはカムチェーンのタイミングを示すものなので必ずシャフト側で確認しましょう。
カムシャフトを載せたら、上記画像の刻印2 ~ 3間のカムチェーンについてるぽっちの15個目が刻印3の矢印上にあることを確認。ずれている場合カムの取り付けがおかしいです
確認したらホルダーをセット。ボルトは元々ついていた場所に戻します。
これからボルトを締め付けていくわけですが、しょっぱなからトルクをかけて締めるのはNG
まずは軽くボルトを手で回して取り付けます。こんな感じ。

そうしたらボルトの傘部分がホルダに着座するように手で締めます。締めづらかったらソケットを手で持って締めるのも可。着座させてから初めてトルクレンチでトルクをかけていきます。トルクをかける順番はホルダに刻印している数字通りに。マニュアルにも指定されています(カムホルダボルト 10Nm)

取り付け終わったらカムチェーンテンショナーを取り付けます。
ストッパーを解除して1段目まで戻したのち、新品のガスケットを付けて取り付けます。(10Nm)あとはスプリングを入れて蓋を取り付けます(8Nm)
蓋を付けたらカムチェーンが張ったことを確認してください。この後タイミングホールカバー(2.3Nm)とクランクシャフトカバー(11Nm)を付けます

後はヘッドカバーにガスケットを押し込んだ後、ガスケットの丸い部分に液体ガスケットを塗りヘッドカバーを元に戻します。
取り付けボルトには新品のガスケットを取り付けて、ガスケット裏面(ヘッドカバーに接触する面)にエンジンオイルを塗ってからボルトを取り付けていきます。取り付けには順番があり、車体右側のヘッドカバーボルトのガスケットがヘッドカバーにつくまで締めた後、左側のボルトを同じように締める。締めたら車体左側からトルクをかける。(12Nm)

後は外したラジエータ/コントロールバルブをもとに戻す
ラジエータ固定ボルト(10Nm)コントロールバルブステー(10Nm) 
※クーラントを入れ忘れないようにしましょう。(抜いた人のみ)

まとめ

お疲れ様でした。DOHCのバルブクリアランス調整は結構面倒臭いです。お店に任すなら部品代込みで2~3万円くらいは見ていた方がよいかと。

余談その1:クリアランスって重要

調整する前はなんか加速が鈍いなあと。アクセル開けても回転がついてこないというか、少しタイムラグがあるというかなんか思い通りに加速していかなった。
調整した後はビンビンエンジンが回る。0.0何mmという小さな差であってもエンジンにとっては大きな差なんだなあ~と実感しました。
ちなみにクリアランスは狭いほうがいいのかといわれると否です。
冷間時のクリアランスが狭いと熱入ったときに各部が膨張するので圧縮抜けますよ?

余談その2:品番と部品代

11173-12K00-000 ヘッドカバーガスケット \1045 ×1
11191-27E70-000 ヘッドカバーボルトワッシャ \253 ×2
12892-05C00-160 タペットシム(T:1.60)\363 ×3
12892-05C00-155 タペットシム(T:1.55)\363 ×1
12837-12K00-000 テンショナーガスケット \110 ×1
液体ガスケット 耐油タイプ \385 
合計:3498円(Webike価格)
これにトルクレンチなどの工具代と時間がかかるので、自分でやるのかお店に任すかはあなた次第。

SK11 プレセット型トルクレンチ 差込角6.35mm 2~26N・m STR2-26
SK11 プレセット型トルクレンチ 差込角6.35mm 2~26N・m STR2-26
自分の使っているやつ。お金あるなら東日を買いましょう。工具にお金をかけれるならスタビレーがオススメ